心を癒し、絆を深める「手当て」の不思議な力!
「手当て」が生み出す‟絆ホルモン”
お腹が痛いときに手で腹部をなでる
不安や緊張を感じるときに手で頬に触れて気持ちを落ち着かせる……。
このように何気なく体のどこかに手を当てて
自分自身を癒やしていることは多いもの。
あるいは信頼関係を築いている人に手で触れたり
その人からやさしく触れられたりすることでリラックスしたり
幸福感に包まれたりした経験がある人も少なくないことでしょう。
ケガや病気などの処置をする医療行為を「手当て」といいます。
言葉の由来は諸説ありますが、私たちが普段から自然に行っている「手を当てる」ことによって
得られる癒やし効果が原点という説もあります。
なぜ手で肌や体に触れると痛みが和らいだり、心が穏やかになったりするのでしょうか。
その理由の一つとして挙げられるのが「絆ホルモン」「幸せホルモン」と
呼ばれるオキシトシンの存在です。
【オキシトシンの分泌を促す触れ合いのコツ】
オキシトシンの分泌を促し、癒やし効果を得るためには次の3つのポイントが重要です。
1 お互いに触れ合うことが快適だと思える相手とスキンシップを図る
触れたい、触れてもらいたいという気持ちをお互いに共有することが不可欠です。
触れたくない、触れてほしくないと思う相手とスキンシップを図っても
オキシトシンの分泌量アップはあまり期待できません。
2 自分自身がリラックスした状態で、愛情をもって触れる
オキシトシンには相手の感情と同調する作用があるといわれています。
自分自身がリラックスした状態で人に触れることで相手もより安心でき
相手が喜んでくれることで自分もまたハッピーになり
オキシトシンの分泌が促進される効果が期待できます。
「面倒くさい」などと思わずに愛情や思いやりをもって触れることで
自分自身を癒やすことにもつながります。
なお、相手が緊張や不安を感じていたり、興奮したりしているときにはぎゅっと圧をかけて抱きしめたり
包み込むように手を握ってあげたりすると自律神経の副交感神経が優位になり
心を落ち着かせる効果が高まります。
3 ゆっくりしたスピードで5~10分触れ続ける
英国の神経心理学者らによって行われた研究(※1)で、1秒に5cm前後の速度でなでたときに
最も気持ちよく感じるという結果が出ています。
【セルフマッサージの4つのポイント】
セルフマッサージを行う際は、次のポイントをぜひ意識してみましょう。
1 テレビを見ながらなどの「ながらマッサージ」ではなく
自分の皮膚の感覚に意識を集中させる手で触れたところがどのように感じるか
自分の感覚に意識を向けてみましょう。
2 オイルやクリームなどをなじませてゆっくりマッサージする
何も塗らずにマッサージするよりも、オイルやクリームをつけて行ったほうが心地良く感じ
リラックス効果が高まる傾向にあります。
3 ゆっくり深呼吸をしながら行う
深い呼吸によって副交感神経が優位になり、リラックス効果が高まります。
4 背中やお腹の下(丹田)は10秒ほど手を当てて温める
ストレスの緩和などの効果が期待できます。
なお、リラックスとは反対に、「頭をシャキッとさせたい」「眠気を早く覚ましたい」といったときは
オイルやクリームはつけず、少し速めのスピードで皮膚をさすってみましょう。
自律神経の交感神経が優位になり、覚醒効果が生まれます。
不安やストレス、苦痛などを和らげて心を癒やし、親しい人とより良い関係を築く。
これが「手当て」によって得られる最も大きな効用だと考えられます。
「自分は元気だから大丈夫」と思っていても、人に触れられることによって
ストレスで体が凝り固まっていたり
心が想像以上に疲れていたりすることに気がつくケースは少なくありません。
家族や友人、パートナーなど可能な範囲で触れ合える相手との時間を大切にしましょう。
プロのマッサージを受けるのも一つの方法ですが、癒やし効果を得るためには強めにもみほぐすタイプより
やさしいタッチでなでるようなタイプのマッサージを選ぶことも大切です。